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Blog 2025/09/19

シリコンバレーでのSummer Internship

CO2026のT.Sです。私は社費派遣ですが、今年の夏に当社のシリコンバレー拠点でサマーインターンシップを実施してきました。この記事では、その背景と内容、自分のTakeawaysを共有したいと思います。

背景

Texas McCombsでは、卒業要件の一つとして6週間程度の「Work Experience」が求められます。私費の方は、インターン先を卒業後の就職先とするべくリターンオファーを求めて実施するわけですが、社費の場合は少々様相が異なります。

社費派遣の場合は、社内の規定として、大まかに①インターンシップ禁止、②自社でならOK、③他社でもOKという区分ができますが、もし①の場合はインターンシップ以外の活動(McCombs+やFellowsプログラムといったパートナー企業に対する実務的なコンサル経験、スタートアップ等での無償インターンシップなど)で本要件を充足することもできます。③の場合でも、そもそも社費生のインターンシップを避ける企業も多く(リターンオファーを出しても基本的に無駄なため)、②の自社で行うインターンシップは現実的な手段として挙げられます。私はシリコンバレー拠点でのインターンシップを選択しましたが、主な理由は「シリコンバレーのスタートアップエコシステムを理解・体感したい」、「当社の他の海外拠点と比べて、仕事内容が異質な(想像がつかない)ビジネス拠点である」という点です。

内容

当社のシリコンバレー拠点では、スタートアップとの面談や出資先のVCファンドと連携した情報収集、知の探索活動等を行っています。基本的には面談・面談・面談…といった日々になるわけですが、空き時間にシリコンバレーのテックカンパニーやコンピューター博物館、発祥の地であるHPのガレージ等にも訪問することができました。また、社内外向けにシリコンバレーと他地域のスタートアップエコシステムを比較検証する報告会を実施しています。いくつか日本人コミュニティの集まりにも顔を出しましたが、当然テキサス(オースティン)とは規模も密度も違う印象です。日系スーパーの品ぞろえも素晴らしく、同地が日本人にも人気なのには納得でした。休日には近場のワイナリーに行ってみたり、ロサンゼルスまで移動してリアル二刀流を拝見したり、といった貴重な機会も得られました。

Takeaways

インターンシップという限られた時間ではありましたが、非常に収穫の多い経験でした。Takeawaysの中で、あえて3つに絞ると以下の通りになります。

  • シリコンバレーのスタートアップエコシステムの異質さ
    • 数字でしか見たことがなかったので実感がなかったですが、当地のスタートアップエコシステムは圧倒的かつ有機的です。他の地域とは一線を画する「ベンチャーキャピタル」(米国全体で約2,090億ドルのうち、CAベイエリアだけで約900億ドル⇔日本は約52億ドル/2024)、各テックカンパニーを触媒とする流動的な「人材」、Pay it forwardやインテリジェントな失敗を前向きに捉える「文化」、StanfordやUC Berkleyといった知の集積・アクセラレーターとしての「発射台」…様々なステークホルダーが機能的に絡み合ってその異質さを生み出しているのであり、単純な模倣や二番煎じは不可能です。

  • 米国のエコシステムの地域性・文化性
    • 米国は国土が広く、一つ一つのエコシステムが独立しているため、各地域のバックグラウンドにより競争力を保つためのテーマが異なります。例えば、オースティンはシリコンバレーとは異なるエコシステムを抱えています。テキサス州は税率が低く、産油地・ガス産地であることを背景にエネルギーコストも低いことが特徴的で、コスト優位性を有する一方で高いQoLを提供できます。また、「アンカーテナント」モデルと呼ばれる「大企業を中心とした戦略的誘致活動」が活発で、テキサス大学や州政府も協力し合って研究・成長基盤を提供しています。2015年から2022年の間に、テキサス州へ本社を移転した企業の数は271社(うちCAからの移転数は136社)と全米でも最多です。そうして生じた雇用が人材を集め、インフラも充実していくという乗数効果を生み出しています。

  • 日本経済への還元・提言
    • 上述のように、日本におけるベンチャーキャピタルは米国の2.5%程度しかありません。こちらの資金供給量を継続的に増やしていく必要性は言わずもがなですが、人材の流動性・挑戦しやすい文化・産官学の連携強化といった点も、効果的なスタートアップエコシステムを構築する上では欠かせません。一方で、日本にも米国が模倣できないこともあり、米国はトランプが製造業を国内へ取り戻そうとしている通り、自ら「ものづくり」する力を失っています。日本には自動車産業を中心として、ハードウェアに対する知見・ドメイン知識を留めており、これをフックとして競争力を高めなければなりません。

5月にはSwedenで実施されたSTEP(短期交換留学)に参加し、欧州・ストックホルム流のイノベーション・スタートアップエコシステムを学ぶことができ、今回のシリコンバレーでのインターンシップを通じて米国流のそれの理解を広く深くすることができ、多角的なアプローチができるようになったと感じています。こういった機会は米国MBAへ留学したからこそできるものであり、自分のキャリアも異質なものにできるチャンスです。残りの期間も意識的に様々な挑戦をしていきたいと思います!

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