Star Professor Series: “Couach”, Stephen Courter
こんにちは、2年生のTSです。卒業シーズン真っ盛りということもあり、次のステージが始まる前に積み残しているブログネタを書ききりたいと思います!
今回のスターシリーズでは、テキサス大学マコームズ校(UT McCombs)で学生から「コーチ(Coach)」の愛称で親しまれている名物教授、スティーブン・コーターを紹介します。彼の「コーポレート・ターンアラウンド(企業再生)」の授業は、ビジネスの修羅場をくぐり抜けてきたコーチだからこそ語れる、熱気と実践に満ちた場です。
1. 異色のキャリアを持つ「コーチ」
コーチの経歴は、元米国陸軍中佐、KPMG/IBMを経て、複数の通信会社(ベルギーのSprint/Global One、Enertel Communications、Neon Communication)でCEOを歴任し、現在も複数の会社でDirectorやChairmanを務めるという、まさに超実戦派です。その経験をベースにした講義は、もはや「コーチ劇場」と呼ばれるほど毎回パッションにあふれています。
面白いのは、これほど「コーチ」と呼ばれながらも、授業内でのスポーツの比喩(例え話)は一切禁止、キャップ禁止等の独自ルールがあること 。あくまでビジネスのフィールドを舞台として語ることを徹底させるプロ意識の表れだと思います。
2. 教室は「取締役会」そのもの
授業は単なる講義ではなく、企業の「取締役会(Boardroom)」さながらの緊張感で行われます。 ネームプレートの提示が必須だったり、プロフェッショナルな振る舞いが厳格に求められたりするのも、一瞬の判断や発言が命取りになる企業再生の現場をリアルに体験させるためです。学生たちはここで、リーダーとしての「覚悟」を学びます 。
講義中はコールドコールも多発しますし、即席でグループワークに取り組むことも多く、事前の準備は必須ですがそれに見合った学びはあるのがコーチの「コーチ」たる所以でしょう。
3. 「左側」を直せば「右側」はついてくる
この授業の核心の一つは、「貸借対照表(B/S)の右側(財務・負債)をいじる前に、まず左側(資産・オペレーション)を直せ」という教えです 。 どんなに借金を整理しても、事業そのものがキャッシュを生む力を取り戻さなければ意味がないです。そのため、授業では「13週間キャッシュフロー予測」のような、泥臭くも切実な現金の管理手法を徹底的に叩き込まれます。
これ以外にも様々な教えが、それぞれの再生企業のステージに応じて提供されます。これらは一つ一つの企業だけでなく、部門単位にもあてはめられる普遍的な内容です。会社自体が拡大傾向にあっても、部門単位で見てみると上手くいっていないことはよくあることではないでしょうか。本講義のフレームワークは、対象企業・部門にピントを合わせることでいかようにも活用することができます。
4. 企業再生の5つのステップ
授業では、ドナルド・ビボールト氏の古典的フレームワークを使い、再生プロセスを5段階で捉えます。
- 経営陣の刷新: 衰退を招いたリーダーを代え、適切なチームを作る 。
- 状況評価: 会社の「余命」と存続可能性をシビアに分析。
- 緊急事態(止血): 徹底したコスト削減と非中核事業の売却で現金を確保。
- 安定化: 収益性を回復させ、組織を落ち着かせる。
- 成長への回帰: 新たな戦略を立てて、再び成長軌道へ。
本書では97名の企業再生成功者へのインタビュー調査を実施、成功する秘訣を分析しており、この分野の決定版として企業再建に携わるマネージャーやコンサルタントの間でもいまだに引用されています。もし関心のある方はまず読んでみてみることをお勧めします!(一銭ももらってません笑)

5. 日本のビジネスへのヒント
米国のようなラディカルな人員削減や解雇が難しい日本でも、この「事業を立て直すステップ」の考え方は十分に通用します 。繰り返しになりますが、会社全体だけでなく一つの部署や新規プロジェクトの再建にも応用できる「一生モノの思考ツール」と言えるでしょう 。
「コーチ」の授業は、組織の衰退サインをいち早く察知し、再び輝きを取り戻すための、リーダー必携のプレイブックです。McCombsに入学された方は、コーチのエネルギーにぜひ触れてみてください!