よく聞かれる質問②(印象的なカスタムコア)

Class of 2026のT.Sです。今回は、前回から引き続き、説明会やコーヒーチャットでよく聞かれる質問「印象的な授業」について、在校生それぞれの考えをまとめたいと思います。なお、必修授業であるコア科目は以前のブログ記事で少し触れておりますので、今回は選択必修科目であるカスタムコア科目について書いていきます!
T.S(CO2026)
①科目名・教授
AI in Business and Society / Maytal Saar-Tsechansky
②授業概要
今最もアツい分野ということでAIのカスタムコアを選択しました。従来の予測AIから生成AIまでの仕組みを学び、ニュージーランドの大学が開発したノーコードツールであるWEKAを用いて実際にAIを使ってデータ分析を行います。
・講義形式:座学+クラス内ディスカッション+クラス内コンペ
講義は、スライドを土台とした座学が基本ですが、たまに教授が質問を投げかける形でクラス内ディスカッションも行います。自由に挙手して発言することもあれば、コールドコール(指名)で発言を促されることもありますし、小さなグループを作って各チームで意見を出すこともあります。その他、ノーコードのAIツールである「WEKA」を用いた演習を行うこともありますが、教授がステップを事細かに説明してくれるので簡単です。なお、WEKAの分析を用いて企業の利益を最大化するクラス内コンペも実施され、優勝チームにはクッキーが振舞われました🍪
・宿題:個人ワーク+グループワーク
宿題は、AIに関する現実の諸問題について考える機会です。宿題には2パターンあり、授業内に習ったことについてコンセプトチェックをするタイプとWEKAを用いたデータ分析を行うタイプです。WEKAの宿題については、教授が詳しく手順を宿題の問題文に書いてくれているので苦も無くできます。今年は3つ宿題が設けられており、うち一回は二人~三人で実施するグループ形式でした。余談ですが、AIの授業ということもあり、生成AIの利用はむしろ推奨されています(当然最終的な答えの質を担保するのは我々なので、ハルシネーション等には注意が必要です)。
・試験:グループでの最終プレゼンあり
グループでいままでにないAIサービスを考案し、AIスタートアップの経営者に向けてプレゼンするという機会があります(今回は投資家とのスケジュール調整がつかず、クラス内ディスカッションのみとなりました)。宿題の負荷は重くないですが、グループでの最終プレゼンありなので、他の授業の試験やプレゼント被る可能性が高く終盤はなかなか骨が折れます。。。
③印象的なポイント
・入門編としては良い
AIについて全く学んだことのない人でも抵抗感なく学べる講義ですが、それなりに自分でコーディング等もできる人にとっては確実に物足りないです。
・WEKAが良い
このツールがなかなか使いやすく、これを知れただけでも自分的には収穫大です。データセットさえ準備できれば数回クリックしただけで様々なAI分析ができます。R(R Studio)でエラー地獄にはまってストレスが溜まるのと比べると、このツールのすばらしさがよくわかります。
・教授がやさしい
Maytel教授は非常にフレンドリーで、宿題の出題方法を見てもそれがわかります。AI初学者が躓かないように手取り足取り教えてくれますし、授業もわかりやすく質問にも嬉しそうに答えてくれます。朝8時開始の講義をとったせいかクラスの人数が少なく、カスタムコアでありながらインタラクティブにできたので理解が深められました。
R.S(CO2026)
①科目名・教授
Valuation / Ari Kang
②授業概要
タイトルの通り、投融資・LBOやM&Aを実施する際どう企業を評価するのか、その手法を幅広に取り扱う科目です。
最初の数回はCoreのFinanceやAccountingの復習、以降DCFモデルの作成やDebt・Equityの調達コストの計算手法等、異なる規模の企業を評価する際の細かな調整手法といった“The Valuation”の授業になります。バックグラウンドはあるものの個別企業への投融資業務経験がないため、ケース課題等を通して各Valuation手法(点)と業務で習得したスキル(点)が繋がりました。
なお、Valuationは別教授(Xavier Sztejnberg 通称: X)がFall 2で講義を持っており、同教授はWall Street For McCombs (投資銀行へ転職を検討している学生が所属する選抜プログラム)の指導教官を担っていますので、ガチなValuationを学びたい方は彼の授業を受講することを検討ください。私がKang教授のValuationをSpring 1で受講した大きな理由の1つとして、より高度なファイナンスを扱うElective科目(Venture FinanceやPrivate Equity等)を受講するためには、Custom CoreのValuationを履修済あるいは履修していることが絶対条件となっていることにFall 2の履修登録後に気づいたからです・・・。
③印象的なポイント
Kang教授の講義の良かった点として、ファイナンス科目で出てくる様々な式に関して、“なぜ”そのような式が成立するのか確りと証明してくれる点です(後述の通り韓国出身の教授なので、数式の証明を重視している日本の教育方針と似ているのかと思います)。CoreのFinanceの授業ではあらゆる式をさらっと説明されて“なぜそうなる?”という説明が欠けていたと都度思っておりました。同じ講義を受けていたアメリカ人同級生に聞いたところ、アメリカは分業制が進んでいるため自分の範囲外のことはより詳しい他者に任せてしまうこと、また総じて学んだことが実社会で即利用できるのか(How?)をより重視しているとのことなので、“Why?”の部分は然程興味がないようです。一方、Kang教授は“Why?”を丁寧に説明したうえでケース課題等で実践(How?)を積ませるため、“Why?”を重視する私としては満足度が高かったです。また、教授が韓国出身と同じアジア圏ということもあり、個別に質問に行くと“I’m trying to learn Japanese!”と日本に興味を示されて、教授の日本語の練習相手になるという貴重な経験もしました(ちゃんと助詞が使えてて感動しました)。
K.S(CO2025)
①科目名・教授
Performance Management and Control / Brian Lendecky
②授業概要
タイトルの通り企業業績をいかに管理し、コントロール(改善)するかという課題を会計観点(基本的な原価会計と管理会計)で考えます。
たとえば「ビジネスでかかるコストをどのように商品、サービスに割り当てるのか」を誤ると、本当は利益がマイナスである商品の売上拡大を頑張って逆に利益を失ってしまいます。また「売上、利益、コストといった財務指標の向上、下落がどの企業内活動・ビジネス環境変化によって引き起こされるのか」をうまく説明できないと、営業担当、購買担当、生産管理担当のどこを変えれば改善するのかわかりません。こうした課題を解決するために、ビジネスを会計数値に落とし込み、それらがどのように影響を与え合っているのか論理的に説明を試みます。クラス内ワークでもこの作業を実践するのですが、与えられたデータをもとにビジネスの流れを組み立てる作業はパズルのようで面白いです。
③印象的なポイント
講師は会計コンサル出身のパワフルナイスガイ。内容的に教える人次第でつまらなくなりそうですが、コンサルでの経験談をもとに具体的に説明してくれるので、会計未経験者でもイメージしやすいと思います。原価会計の説明の中で、「計測していないものは管理できない」としきりに言われていたことが印象的でした。ITシステムエンジニアリング出身の私としてはなじみのある言葉で、データ計測の意義を改めて認識することにつながりました。
(インターネットを調べてみると、「計測していないものは管理できない、というのも重大な誤りである」というのがデミング博士の原文らしいです。もちろんデータに基づいた改善は重要であるもののそれ以外にもできることはあるよ、というニュアンスのようなので、まずは取れるところはデータを取りましょう。)
https://deming.org/myth-if-you-cant-measure-it-you-cant-manage-it/
H.Y(CO2025)
①科目名・教授
Managing Human Capital / Tom Rauzi
②授業概要
Human Resource (Capital) のマネジメントについて回帰分析等の統計手法を用いて分析を行い、データドリブンな定量的アプローチについて考えるクラス。クラス内では、アメリカ内のとある学区に通う生徒の学力向上について、教員の能力や属性がどの程度寄与するか?着目すべき能力や属性は何か?といったものや、ある時代のNBAチームのパフォーマンスについて、得点力の高い選手を5人揃えてコートへ送り出すことが勝利への最善策なのか?数値化できない能力で勝利へ貢献している選手は誰か?といったものまで、様々なケースを扱いました。Excelでは手間のかかる回帰分析やグラフの作成をJamoviというソフトを使って進めていく点も特徴的でした。HRの理想と現実を様々な角度から考えることのできる良質な授業です。
③印象的なポイント
TomはDellの元HR責任者ということもあり、定量的な分析を軸にアプローチするものの、実際は数値化しにくい定性的な事実も組織のパフォーマンスに影響を与えていることをよくわかっています。”There is no silver bullet”が口癖でした。説明は非常にわかりやすく、毎回のクラスは学生との活発なやり取りで盛り上がっていたのが印象的です。自分が知っている日本企業のHRへの取り組みと比較すると、米国をはじめとするグローバルトップ企業のHRは10年(もしかしたら15年)以上先を進んでいるなという印象をもちました。日本と他国とで雇用制度や労働観の違いはあれど、最適なHRマネジメントを目指して統計的かつ科学的にアプローチするやり方は学びが多かったです。
Y.K(CO2025)
①科目名・教授
Analysis of Market / Ty Henderson
②授業概要
必修のMarketing ManagementではMarketingを包括的に学び、事例や簡素なデータ演習で理解を深めるのに対して、このAoMではマーケティング活動の手段としてデータ収集・モデル作成結果から洞察を得るための、各種方法の習得に焦点を置いています。ハードなデータ分析ができることが目的ではなく、マネージャーとしてデータ分析を理解し担当するメンバーと議論できるようになることと、自分自身も少しデータを扱えるようになることが授業のゴールです。授業はデータの基礎から始まり、市場から得られる購買履歴のデータを用いた回帰分析、販促活動の効果測定、買う・買わない等の0/1アウトプットの確率予測、新製品がどの程度顧客を惹きつけられるか、などを求める手法を学びました。データ分析手段としてRも利用しますが、授業範囲はExcelでも代用可能です。
③印象的なポイント
McCombsの授業の中でも特によく構成された授業でした。Ty先生はユーモアと優しさを兼ね備え、データ扱いが苦手な学生にも丁寧に対応していました。必修科目のMarketing ManagementとStatisticsへの理解が、このAoMで繋がって更に理解できたと思います。授業の狙いの通りに、データ分析を知らないが、指示できるマネージャーになりたい人には最適です。MBA中でも色んなプロジェクトでデータ収集・分析を伴うことがありますが、この授業を履修していれば良いスタートラインに立てます。一方で、既にゴリゴリできる人には簡単すぎる(不要)授業かもしれません。